記憶


忘れていた物事が
ノートのあいまに挟まっている
ささいなことではあるけれど
散らばったすてきとすてきの間を
こぼれたはずの水のようなそれらを
ささやいてくれるのだ

ざざん、ざあざあ
打ち寄せては引く
記憶の波に
流れ
遠くへ行ってしまうものもある
不完全だけれども
その形のないパズルのピースを
さぐり
さくりとはめ、
のこし
また忘れて
ざわり、怖がり
さわれないけれど
包み込みたいように思うのだ

密はやがて空く
そしてまたさわさわと積もり
ふと見ると
あたたかな
なつかしさを愛おしむ気持ちが
あいまあいまに
さんさんと
しみこんで
すき
せかい
それから
おやすみなさいと
おはようをまた
繰り返していく


2010.10.2


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