親愛なる僕ら


 僕らは特にメールをしない。
 彼女が正直にうちあけたことによると、ほんの短い返事をうつのに、とても悩むのだそうだ。それでいつも、忘れたころに返事が来るのか。僕は、てっきり本を読みふけっているからだと思っていたので、やはり女の子はわからないものだ。
「別に毎日会うからいいよ」
 僕はできる限り優しく言ったつもりだった。けれども彼女はしばらく気にしていたのかもしれない。
 今日の朝、彼女のクラスの前で別れる際に、一枚の手紙をくれた。そこにはよくわからない生き物の絵があり、吹き出しに僕の名がある。

「やっぱり字を書いた方が、書きやすいみたい!
今、家でひとりだからさみしいです。 そういえば、本読み終わったので、明日の放課後に図書室へ行きたい!」
 僕はそんな感じの手紙を読んだ。
 チャイムがなり、辺りがばたばたがたんと騒がしくなったあと、先生が入ってきた。

「今一時間目。
昨日親いなかったのかよ。
電話とかしろよな」

 まずそこまで書いたあと、恥ずかしくなって電話のくだりを消した。結局、いろいろ悩み書き終わったころには、授業も終盤へさしかかっていた。

 いつ渡せばいいのか相当悩んだあと、しかたなくその後の休み時間に彼女のクラスへ向かった。途中の水道場で、彼女が友達と笑いながら手を洗っているのを見つけた。
「あー」
 僕の口から変な声が出て、彼女とその友達はきゅ、と振り返った。
「ああ!」
 彼女はあたふたと水を止め、ハンカチを取り出して手を拭く。そしてそのまま両手を差し出してにこにこしている。ルーズリーフを適当に細かく折ったものをのせると、やった! というような顔をした。傍らで、彼女の友達がすべて分かっているような顔つきで笑っている。ぼっとからだがあつくなり、僕は急いで教室へ戻った。
「おまえ具合わりいの」
 クラスの友人に顔をのぞきこまれたので、ねむい、なんて適当に返事をして机に突っ伏す。
 メールのほうがずっと早く返せるのに。第一、昨日のうちに……
 消しゴムのかすが、机の上に散らばっているのを感じる。もう何を書いたのかも忘れた。恥ずかしさに加え、唐突に笑いが込み上げてきたのを押さえながら、しばらくは眠ったふりをした。





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